KNOW-HOW
電話や会議の会話を文字にし、その時に作った見積書と組で残すと、次回は会話の記録を渡すだけで見積の下書きが出ます。
電話で聞いた条件は、担当者の記憶とメモにしか残らない。担当者が不在の日は見積が止まり、別の担当者が同じ条件を顧客に聞き返す。過去の見積と単価が食い違えば、顧客から指摘を受ける。会話の文字起こしと、その会話を受けて作った見積書を同じ日付と顧客略号で組にして保存しておくと、AIは「この会話からこの見積ができた」という対応関係を材料にできる。次に、会話に無い情報をAIに先に列挙させ(手順2)、単価の根拠を単価表だけに固定する(手順3)。送る前に人が確認する関所は残す。
困りごとと、仕組みがあると変わること
| 困りごと | 起きること | 仕組みがあると |
|---|---|---|
| 電話で聞いた条件を覚えている人しか見積を作れない | 担当者が不在の日に見積が止まる | 会話と見積が組で残り、誰でも同じ手順で下書きが出る |
| 同じ条件を顧客に何度も聞き返す | 顧客の手間が増え、回答が遅れる | AIが「足りない情報」を先に列挙し、1回の電話で聞き切る |
| 過去の見積と単価が食い違う | 顧客から指摘を受け、値引きの根拠を失う | 単価表だけを根拠にし、表に無い品目は「要確認」で止まる |
| 許可や契約が絡む条件を電話口で答える | 後から撤回が必要になる | 台帳の「関所」列に「要確認」が立ち、人が判断してから送る |
電話や会議で条件を聞いたら、その会話を文字にして保存する。次に、その会話を受けて作った見積書を、会話と同じ日付・顧客略号で保存する。この組が手順2以降の土台になる。補足: 会話だけでは分からない状況(現場で見た荷姿、口頭で了承した範囲)は、通話の最後に自分の言葉で話して文字起こしに残す。文字起こしは命名規則の表に従って名前を付けて「会話」フォルダーに、見積は「見積」フォルダーに置く。個人名はファイル名に入れず略号にする。手順4のフローは OneDrive 内で移動しただけのファイルでは起動しないため、ダウンロードした文字起こしは「会話」フォルダーへアップロードする。
命名規則の例(会話と見積を組にする。顧客略号と担当略号は見積台帳の「顧客」「担当」の値と対応させる。Google 側は Google ドキュメントのファイル名)
| 種類 | 命名規則 | 例 |
|---|---|---|
| 会話の文字起こし | 日付-時刻_顧客略号_担当略号_会話.docx | 20260918-1030_a-sha_t01_会話.docx |
| 会話で頼まれた見積 | 日付_顧客略号_見積番号_見積_v1.xlsx | 20260918_a-sha_Q-0091_見積_v1.xlsx |
| AIが作った下書き | 末尾に _AI下書き を付ける | 20260925_b-sha_Q-0102_見積_AI下書き_v1.xlsx |
| 人が確認した版 | 版番号を上げ _確認済 を付ける | 20260925_b-sha_Q-0102_見積_確認済_v2.xlsx |
文字起こしと見積書の2つをAIに渡し、「添付1の会話から添付2の見積を作るとして、会話に無い情報を項目ごとに列挙し、過去の見積から補った箇所と分けて示す」と頼む。目的は見積の完成ではなく、会話に無かった項目の一覧を得ることにある。補足: 有価物か廃棄物か、数量と頻度、荷姿、運搬の要否と車両、搬入条件、支払条件と有効期限、契約の要否(委託契約・マニフェスト)を確認項目に入れる。返ってきた一覧を「足りない情報チェック表」として保存し、次の電話で最初に確認する項目にする。
足りない情報チェック表(手順2でAIに列挙させる項目の例)
| 項目 | 確認する内容(例) | 会話に出なかった場合に起きること |
|---|---|---|
| 有価物か廃棄物か | 買取か処分か。運搬費を相殺するか | 見積の向き(請求か支払か)が決まらない。判定は人の関所で行う |
| 品目と性状 | 何が・どんな状態で(濡れ・汚れ・混合の有無) | 単価が引けない。許可品目かの判断が保留になる |
| 数量と頻度 | 1回か定期か、1回あたりの量 | 車両手配と単価区分が決まらない |
| 荷姿 | バラ/フレコン/コンテナ/パレット | 積込時間と人員が決まらない |
| 引取場所・搬入条件 | 住所、階、車両制限、立会いの有無 | 車両の選定を誤る |
| 運搬の要否と車両 | 自社引取か持込か。2t/4t/ユニック/パッカーの別 | 収集運搬費の行が立たない |
| 現場写真の有無 | 荷姿と量の写真を送ってもらえるか | 数量の見込みが外れ、再見積になる |
| 希望日程 | 希望日と時間帯 | 配車が組めない |
| 支払条件・見積有効期限 | 締め日・支払日、有効期限 | 過去見積の条件を流用して食い違う |
| 契約の要否 | 委託契約・マニフェストの要否 | 法律が絡むため人の関所で必ず確認 |
毎回ファイルを渡し直さないよう、単価表と過去の見積の置き場所をAIに固定して教える。手順2で決めた頼み方は指示文として保存する(構成は表のとおり)。補足: 過去の見積の一覧には、手順4の見積台帳そのものを使う。登録するのは単価表、見積台帳、同じ顧客の直近の見積ファイル数本に絞る。AIが読める単価表には、品目、性状・荷姿、単位、単価、適用条件、改定日の列を持たせる。収集運搬費と処分費は別の行にする。相場連動の品目は数値を置かず「相場連動」と書く。単価表は正本を1つに絞り、古い版は置き場所から外す。
指示文の構成の例(手順3で保存する。自社の言葉に直して使う)
| 構成 | 内容の例 |
|---|---|
| 役割 | 産廃・リサイクル会社の見積担当の補助。下書きだけを作る |
| 使う資料 | 単価は単価表のみを使う。過去見積は同じ顧客・同じ品目の直近の版を優先する |
| 単価表の形(前提) | 列=品目/性状・荷姿/単位/単価/適用条件/改定日。収集運搬費と処分費は別行。相場連動の品目は「相場連動」と書く |
| 出力の形 | 品目・性状/数量・単位/単価/金額/根拠/要確認 の列を持つ表 |
| 要確認の書き方 | 単価表に無い品目は単価を空欄にし、要確認の列に理由を書く |
| 書かない事 | 許可の可否、もの/ゴミの判定、契約の要否は判断せず、要確認に回す |
| 最後の一言 | 会話に無かった項目を末尾に列挙する |
準備が済めば、次回は会話の文字起こしを渡すだけで見積の下書きが出る。下書きの見本は表のとおり。補足: 運用は3つの流れで組む。①会話ファイルが保存されたら見積台帳に1行が自動で増え、担当者に通知が届く。②担当者がノートブック/Gem に文字起こしを渡して下書きと「要確認」の一覧を受け取り、「見積」フォルダーに「_AI下書き」を付けて保存する。③人が関所で確認し、台帳の状態を「確認済」にしてから送る。関所で止める行は3種類(もの/ゴミの判定や許可が絡む品目、単価表に無い新規単価、委託契約やマニフェストの要否)で、AIに決めさせず人が判断して台帳に記録する。見積台帳は Excel の「テーブル」にし、テーブル名を「見積台帳」にする。状態の値は5つに固定する。
AIが返す見積の下書きの見本(見積台帳 Q-0092・B社の例。単価の欄には単価表の値が入る)
| 行 | 品目・性状 | 数量・単位 | 単価 | 金額 | 根拠 | 要確認 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 収集運搬費(廃プラスチック類・バラ) | 1 回/月 | 単価表の値 | 単価×数量 | 単価表: 収集運搬(自社引取)の行 | 車両の種類が会話に無い |
| 2 | 処分費(廃プラスチック類・汚れなし) | 8 m3/月 | 単価表の値 | 単価×数量 | 単価表: 廃プラスチック類(汚れなし)m3 の行 | なし |
| 3 | 処分費(廃プラスチック類・汚れあり) | 会話に無い | 空欄 | 空欄 | 単価表に該当の行が無い | 許可品目と性状を人が確認。新規単価 |
| 4 | 支払条件・有効期限 | - | - | - | 過去見積 20260612_b-sha_Q-0071 の条件を流用 | 会話に無い。顧客に確認 |
| 5 | 契約・マニフェスト | - | - | - | 判断しない(指示文のとおり) | 委託契約の有無を人が確認 |
Power Automate のフロー例(2本に分ける。費用の「標準」は、Microsoft Learn の各コネクタのページの「クラス」欄が Standard であることを指す)
| 順 | コネクタ | トリガー/アクション | 設定の要点 | 費用 |
|---|---|---|---|---|
| フロー1-1 | OneDrive for Business | トリガー「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」 | フォルダー=「会話」。OneDrive 内で移動したファイルは新しいファイルと見なされない。アップロードで置く | 標準 |
| フロー1-2 | Excel Online (Business) | アクション「テーブルに存在する行を一覧表示する」 | フィルター クエリ=ConvFile eq 'トリガーの名前'。列名は英数字のみ対応。改ページ位置をオン。0 件の時だけ次へ | 標準 |
| フロー1-3 | Excel Online (Business) | アクション「テーブルに行を追加する」 | ファイル=見積台帳.xlsx、テーブル=見積台帳。ConvFile=トリガーの名前、状態=未着手。他の列は担当者が記入 | 標準 |
| フロー1-4 | Office 365 Outlook | アクション「メールを送信する (V2)」 | 宛先=見積担当の共有アドレスに固定(担当別にするなら略号とメールの担当表を別テーブルに置いて引く) | 標準 |
| フロー2-1 | OneDrive for Business | トリガー「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」+条件 | フォルダー=「見積」。名前に「_AI下書き」を含む時だけ次へ進む | 標準 |
| フロー2-2 | 標準承認(Approvals) | アクション「開始して承認を待つ」 | 承認者=責任者。詳細に下書きのファイル名と、関所の要確認の内容を書く | 標準 |
| フロー2-3 | Excel Online (Business) | アクション「行を更新する」(任意) | キー列=見積番号、キー値=その番号。一致が複数あると最初の行だけ更新。手作業なら担当者が状態を書き換える | 標準 |
| (任意) | AI Builder | フロー内で AI に文章を作らせるアクション | Microsoft 365 のライセンスには含まれない。使う場合も後段に人の承認を置く | 有料 |
見積台帳の列と見本(Excel・テーブル名「見積台帳」)。状態の値=未着手/AI下書き/確認済/送付済/差戻し。会話ファイルの列はフィルターに使うため英数字の列名(ConvFile)にする。実ファイルには金額・有効期限・送付日の列も足す
| 見積番号 | 受付日 | 顧客 | 担当 | 品目・数量 | 単価・根拠 | ConvFile | 状態|関所 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Q-0091 | 2026-09-18 | A社 | t01 | スチール棚(鉄くず) 1,200 kg | 単価表: 鉄くず(バラ)kg の行 | 20260918-1030_a-sha_t01_会話.docx | 確認済|不要 |
| Q-0092 | 2026-09-19 | B社 | s02 | 廃プラスチック類 8 m3/月 | 単価表: 廃プラスチック類(汚れなし)m3 の行。汚れあり分は空欄 | 20260919-1415_b-sha_s02_会話.docx | AI下書き|要確認(許可品目・性状) |
| Q-0093 | 2026-09-22 | C社 | t01 | 混合廃棄物 2 t | 空欄(単価表に無い) | 20260922-0905_c-sha_t01_会話.docx | 差戻し|要確認(もの/ゴミの判定) |
| Q-0094 | 2026-09-22 | A社 | t01 | 銅(有価物) 350 kg | 相場連動(見積日の相場) | 20260922-1600_a-sha_t01_会話.docx | 送付済|不要 |
| Q-0095 | 2026-09-24 | D社 | s02 | 事務所移転の混合廃棄物 1 t+什器 | (AI下書き後に記入) | 20260924-1120_d-sha_s02_会話.docx | 未着手|(AI下書き後に記入) |
| 道具 | 無料か有料か | 役割 |
|---|---|---|
| Microsoft Teams 通話の文字起こし | 管理者が Teams 通話ポリシーで記録と文字起こしを許可している場合に使える(必要なライセンスは管理者に確認) | 通話を文字にする。通話後のチャットから .docx/.vtt でダウンロード |
| Word トランスクリプト | Microsoft 365 のサブスクリプションで 1 か月あたり最大 300 分 | 録音ファイル(.wav/.mp4/.m4a/.mp3)を文字にする(Web 用 Word/Windows 版 Word for Microsoft 365) |
| Microsoft 365 Copilot Chat | 追加料金なし(Microsoft 365 サブスクリプションの仕事用アカウント) | 文字起こしと見積を見せて足りない情報を聞く。指示だけを固定するエージェントを含む |
| Copilot ノートブック | Copilot Chat のライセンスで利用可(参照は 50 件まで。有料ライセンスで 300 件) | 単価表・見積台帳・直近の見積・指示文を参照として登録し、根拠にする |
| Power Automate | Microsoft 365 に含まれる(標準コネクタのみ。AI Builder・プレミアム コネクタは有料) | 会話ファイルの保存を検知して台帳に 1 行追加・通知。下書きの保存を検知して承認を依頼 |
| Gemini アプリ(Gem を含む) | Google Workspace の仕事用アカウントで利用(管理者が有効化。エンタープライズ級のデータ保護の対象かを管理者に確認) | ファイルを見せて聞く。録音を文字にする。Gem に指示文と単価表を固定 |
見積の下書きは社内の道具で組めますが、契約書の項目抽出は難しいため、本気で作ったものをSaaSに実装して使えるようにしています。