KNOW-HOW
電話・会議・現場の会話を丸ごと文字にして1件1ファイルで残し、索引とその後の見積メール・添付まで仕組みに保存させる
電話で決めた回収頻度や容器の条件は、見積を作る段になると記憶が曖昧になり、相手との「言った・言わない」に発展します。現場で見た保管状況や搬出経路は会話に出ないため、文字起こしだけでは見積の条件がそろいません。電話の記録、見積メール、添付の見積書が別々の場所にあると、催促が来たときに経緯を追えません。会話を丸ごと文字にし、会話に出なかった状況を自分の声で末尾に足し、1件1ファイルで保存して索引の Excel に1行ずつ追記すると、半年後でも「誰と・いつ・何を決め・その後どう対応したか」を1行から辿れます。Microsoft 365 なら Teams と Power Automate の標準コネクタ、Google Workspace(Business Standard 以上)なら Google Meet の文字起こしが、追加費用なしの範囲で使えます。
困りごと→起きること→仕組みがあると
| 困りごと | 起きること | 仕組みがあると |
|---|---|---|
| 電話で決めた条件を覚えていない | 見積と食い違う。言った・言わないになる | 時刻付きの文字起こしが1件1ファイルで残る |
| 現場の状況は会話に出ない | 見積の条件がそろわず、再訪や再確認が要る | 終わり際の独り言が同じファイルの末尾に残る |
| その後の対応が別の場所にある | 催促が来ても自分の放置の経緯が分からない | 同じフォルダ・索引の同じ行に対応が続く |
| 見積メールと添付が送信済みと受信トレイに散らばる | どの会話への対応だったかを後から結べない | メールと添付が日時付きの同じ語幹の名前で同じフォルダに残る |
会話の形は「オンライン会議」「固定電話・スマートフォンの電話」「対面(来訪・現場)」に分かれ、使える道具が違います(表「会話の形と道具」)。オンライン会議は Teams か Google Meet の文字起こし、電話と対面は録音して whisper.cpp で文字にします。道具は1回の操作で起動できる状態にします。補足: 手順3の準備として、ここで2つ決めます。①置き場を2つ作る(人が文字起こしを置く「会話記録_受け」と、仕組みが保存する「会話記録」)。②ファイル名の規則を決める(表「命名規則」)。仕組みはファイル名から索引を作るため、日時・相手・種別・主題は、置くときに人が名前に入れます。
会話の形と道具(何で録り、何で文字にするか)
| 会話の形 | Microsoft 365 | Google Workspace | どちらでもない |
|---|---|---|---|
| オンライン会議(自社が開催) | Teams「文字起こしの開始」→「まとめ」タブから .vtt を保存 | Meet「文字起こしを開始」→ Google ドキュメントが主催者のドライブに保存 | 了承を得て録音→whisper.cpp |
| オンライン会議(相手が開催) | 了承を得て録音→whisper.cpp | 了承を得て録音→whisper.cpp | 了承を得て録音→whisper.cpp |
| 固定電話・スマートフォンの電話 | スピーカーにして録音→whisper.cpp | スピーカーにして録音→whisper.cpp | スピーカーにして録音→whisper.cpp |
| 対面(来訪・現場) | 録音→whisper.cpp | 録音→whisper.cpp | 録音→whisper.cpp |
要点だけをメモする方式では、後で見積を作るときに「単価の話は出たか」「容器は誰が用意するか」が抜けます。会話は最初から最後まで丸ごと文字にします。会話だけでは分からないシチュエーション(現場の保管状態・搬出経路・相手が重視している点・自分の宿題・法律が絡む未確定事項)は、相手が退出した後や電話を切った後、文字起こしや録音が動いている間に「独り言」として吹き込みます(表「独り言で吹き込む項目」)。独り言は末尾に残るため、「決まったこと」と「状況」が同じファイルにそろいます。Teams は文字起こし中であることが参加者全員に通知され、Meet は参加者全員の画面右上に文字起こしアイコンが表示されます。電話と対面は仕組みからは相手に何も表示されないため、開始時に「記録のため録音します」と伝えます。
独り言で最後に吹き込む項目(手順2の後半)
| 項目 | 言い方の例 |
|---|---|
| 相手と場所・日時・品目 | 「相手は A社 田中様、電話、9月18日10時半。品目は廃プラスチック類」 |
| 会話に出なかった状況 | 「保管は屋外、雨天時は屋内に移す予定と聞いた」 |
| 相手の様子(重視している点) | 「価格より回収頻度を重視している」 |
| 自分の宿題と期限 | 「見積を20日までに送る」 |
| 相手の宿題 | 「月間の排出量は相手が来週知らせる」 |
| 法律が絡む未確定 | 「有価物かどうかは未確定。人が判断する」 |
①「会話記録_受け」に置かれた文字起こしを、同じ名前の .md として「会話記録」へ保存し、②索引の Excel に1行追記し、③要約を付け、④その後の対応(見積メールと添付)を同じフォルダに保存して、索引の同じ行に書き足します(表「仕組みの設定」「命名規則」「索引 Excel の列と見本」)。 補足: 追加費用なしの範囲で自動になるのは、Microsoft 365 では①②④(Power Automate の標準コネクタ)です。③の要約は、組織で利用を決めた AI に人が .md を渡して作ります。Google Workspace(Business Standard 以上)では、Gemini in Meet の自動メモ生成が会議メモを Google ドキュメントにまとめるため、会議は③まで自動になります。①②④は Apps Script で組みます。 毎朝、索引の「その後の対応」が「未」の行と、最終の登録日時を確認します。
仕組みの設定(Power Automate のフロー2本。A=文字起こし→.md と索引、B=見積メール→.md と添付)
| フロー | 段 | 設定 |
|---|---|---|
| A | トリガー | 「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」フォルダー=会話記録_受け |
| A | 条件 | 「名前」の末尾が .vtt または .txt |
| A | アクション1 | 「ファイル コンテンツの取得」ファイル=トリガーの ID |
| A | アクション2 | 「ファイルを作成する」フォルダー パス=会話記録、ファイル名=「拡張子のない名前」+ .md |
| A | アクション3 | 「テーブルに行を追加する」索引.xlsx のテーブル「索引」に〔自動〕列を入れる |
| A | 式(登録日時) | convertTimeZone(utcNow(),'UTC','Tokyo Standard Time','yyyy-MM-dd HH:mm') |
| B | トリガー | 「新しいメールが届いたとき (V3)」フォルダー=送信済みアイテム、件名フィルター=見積、添付ファイルを含める=はい |
| B | アクション1 | コンテンツ変換「Html からテキストへ」Content=メールの本文 |
| B | アクション2 | 「ファイルを作成する」ファイル名=日時_mail_件名.md、内容=宛先・差出人・件名・本文のテキスト |
| B | 式(日時) | convertTimeZone(受信日時,'UTC','Tokyo Standard Time','yyyyMMdd-HHmm') |
| B | アクション3 | 添付ファイルの数だけ繰り返し「ファイルを作成する」ファイル名=同じ語幹_添付ファイル名、内容=添付の内容 |
| B | もう1本 | フォルダー=受信トレイにした同じフロー(相手の返信用) |
命名規則の例(会話は人が付ける・メールと添付は仕組みが付ける)
| 要素 | 例 | 決め方 |
|---|---|---|
| 日時 | 20260918-1030 | 会話開始の年月日-時分(24時間)。先頭に置くと日付順に並ぶ |
| 相手 | a-sha_tanaka | 会社_担当者をローマ字(並べ替えと検索のため)。敬称は索引の表示用の列で |
| 種別 | kaigi / denwa / raiho / genba | 会議/電話/来訪/現場 |
| 主題 | 廃プラ見積 | 15字以内・日本語(開かずに読めるため) |
| 完成例(会話) | 20260918-1030_a-sha_tanaka_denwa_廃プラ見積.vtt | 受けフォルダへ置くときに人が付ける。仕組みが同じ名前の .md を作る |
| メール(自動) | 20260919-1512_mail_御見積書送付の件.md | フローBがメールの日時(日本時間)と件名から付ける |
| 添付(自動) | 20260919-1512_mail_御見積書送付の件_見積書.pdf | メールと同じ語幹+添付ファイル名。名前順でメールの隣に並ぶ |
| 拡張子 | 原本 .vtt/.txt/.m4a と読みやすい版 .md | 同じ語幹で並べる(例: …廃プラ見積.vtt と …廃プラ見積.md) |
索引 Excel の列と見本(1行=1会話。〔自動〕=フローが埋める列・〔手入力〕=人が埋める列。会社名は架空)
| 登録日時〔自動〕 | ファイル名〔自動〕 | 相手(並べ替え名)〔自動〕 | 相手(表示)〔手入力〕 | 要約(1行)〔手入力〕 | 宿題(自社)・期限〔手入力〕 | その後の対応〔手入力〕 | 法律が絡む未確定〔人が判断〕 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026-09-18 11:05 | 20260918-1030_a-sha_tanaka_denwa_廃プラ見積 | a-sha_tanaka | A社 田中様 | 月2回回収。圧縮梱包の有無を確認したい | 見積書を送る・09-20 | 09-19 見積v1送付(20260919-1512_mail_御見積書送付の件.md) | 有価物か未確定・9/25 に社内で判断 |
| 2026-09-18 15:10 | 20260918-1400_b-sha_sato_kaigi_新拠点回収 | b-sha_sato | B社 佐藤様 | 10月から週1回。容器はB社側で用意 | 契約書案の確認・09-25 | 未 | なし |
| 2026-09-19 09:50 | 20260919-0910_c-sha_suzuki_raiho_金属くず単価 | c-sha_suzuki | C社 鈴木様 | 相場連動の希望。月末締めで合意 | 単価表の改定案・09-30 | 未 | なし |
| 2026-09-19 17:30 | 20260919-1640_d-sha_takahashi_genba_解体分別 | d-sha_takahashi | D社 高橋様 | 混載になりやすい箇所を確認(独り言で記録) | 分別表を送る・09-22 | 未 | 保管積替の要否・確認中 |
| 2026-09-22 11:40 | 20260922-1100_a-sha_tanaka_denwa_廃プラ見積 | a-sha_tanaka | A社 田中様 | 見積v1の回収頻度を月3回に変更希望 | 見積v2を送る・09-24 | 未 | なし |
止まる・取れない条件(公式ドキュメントで確認したもの)
| 項目 | 条件・数値 | 対処 |
|---|---|---|
| Teams の文字起こしの開始とダウンロード | 別の組織・匿名の参加者は開始不可。ダウンロードは既定で開催者と共同開催者 | 記録を残す会議は自社で予定を作る |
| Teams のライブ文字起こし | デスクトップ用 Teams のみ | デスクトップ版で参加する |
| Power Automate(Office 365 ライセンス) | 公式上限はユーザーあたり24時間6,000要求(移行期間中はクラウド フローあたり1万)。超えると調整されて遅くなる | 1件あたりの要求数×日次の件数を見積もる |
| OneDrive「ファイルの作成時」のトリガー | 50MB 超はスキップ。OneDrive 内で移動したファイルは新しいファイルと見なされない | 録画ではなく文字起こしを置く。アップロードかコピーで置く |
| 「新しいメールが届いたとき (V3)」 | Exchange 管理者の設定した上限か50MB の小さい方を超えるメールはスキップ | 大きな添付のメールは手で保存する |
| 「Html からテキストへ」 | 最大コンテンツ長 5MB | 超えるメールは手で保存する |
| Excel Online (Business) コネクタ | ファイル25MB まで・使用後最大6分ロック・複数クライアントからの同時書き込みは避ける | 人が開く時間帯とフローの時間帯を分ける |
| Google Meet 文字起こし | Business Starter は対象外・使えるのはパソコンと Android デバイス | エディションの確認・PC か Android で開始 |
| Gemini(ドキュメント・ドライブ・Meet) | Business Standard 以上(Business Starter は対象外) | Starter では要約は手作業か上位エディション |
| whisper-cli | 入力は16bit WAV のみ・-l の既定は en | ffmpeg で変換し、-l ja を指定する |
| 道具 | 無料か有料か | 役割 |
|---|---|---|
| Microsoft Teams の文字起こし | Teams を含む Microsoft 365 の範囲(ライブ翻訳の文字起こしは Teams Premium) | 会議をその場で文字にし、話者名と時刻付きの .vtt/.docx で残す |
| Power Automate | 追加費用なし(Microsoft 365 のライセンスに要求数の枠が含まれる。Office 365 ライセンスの公式上限はユーザーあたり24時間6,000要求) | 受けフォルダを見て .md 保存・索引 Excel への1行追記・見積メールと添付の保存を自動化する |
| OneDrive for Business/Excel Online (Business)/Office 365 Outlook コネクタ | 標準(Standard)コネクタ | ファイルの検知と作成・索引への行の追加・メールと添付の取得 |
| コンテンツ変換コネクタ(プレビュー) | 標準(Standard)コネクタ | メールの HTML 本文を「Html からテキストへ」でテキストにする(5MB まで) |
| Google Meet の文字起こし | 追加費用なし(Business Standard/Plus・Enterprise 等に含まれる。Business Starter には無い) | 会議をその場で文字にし、Google ドキュメントで残す |
| Gemini(Meet の自動メモ生成・ドライブ・ドキュメント) | Business Standard 以上に含まれる(Business Starter は対象外) | 会議メモの自動作成・ファイルの要約 |
| whisper.cpp | 無料(MIT ライセンス。自前の PC で動かす) | 電話・対面の録音を、音声を外へ出さずに PC 内で文字にする |
会話の記録は仕組みで残せますが、契約書の項目抽出は難しいため、本気で作ったものを SaaS に実装して使えるようにしています。